ブックフェア、ものづくり活版技術に感動 [文具は愉しい!]
ISOTでは時代の変化を感じたのですが、
同時開催のブックフェアでは、大日本印刷のブースで、活版印刷の現場を再現。
これが、ちょっとほろっとするほど大感動でした!
大日本印刷では、活版印刷の工程を2003年に終了したのだそうですが、
今回のフェアのために、特別に当時の職人さんがデモを見せてくれました。
まず、9ポイントの「銀」という文字を、約15分で彫り上げます。
あまりにも小さく、レンズを覗いて彫っていますが、拡大して画面に写しても見えません^^;
雑誌など、締め切りがギリギリの場合、夜中に呼ばれて彫ったこともあるのだそうですが、
他の活字とのバランスを考えたり、早さだけでなく、繊細な心配りをするのだそうです。
この職人さん、自分が彫った字は、印刷物を見ればすぐにわかるのだそうで、スゴイ^^;
もちろん、使っている器具もすべてオーダーメイド。
テーブルに当てている肘を守るための「小座布団」もオーダーメイドっぽいです^^;
そして、彫った文字をあらかじめ組まれた活版の中から、「銀」の一文字だけを抜いて、
彫ったばかりの「銀」を入れてゲラ刷りをします。
中央にある判の1文字を交換
ゲラ刷り。いわばテスト印刷
そして、刷ったものをいただいたのが、これです。「銀」の字が交換済み。
このゲラ刷りとは、活字やスペースになる金属板を糸で囲んで固定しただけのものですから、
その後、大量印刷をするための「版」を作るための「型」になるものです。
つまり、音楽でいえば「マスターテープ」、最も淵(エッヂ)が立った状態です。
これが、非常に味があるというか、PCのプリンターでは再現不能な「生々しさ」があります。
よく、古本だと「初版」にプレミアがつきますが、
「金属」だけに、だんだん磨耗するという話には納得でした。
この画像でも、「ラムプシェード」の「プ」の丸がツブれていますが、これこそが活版の味。
さらに、裏を見ると、印刷された「跡」がくっきり浮かび上がっています。
まったく、活字ひとつで、こんなにも魅力的な文章に見えるのかと思うと、
ため息が出てしまうほどです・・
小説が苦手な私ですが、これなら読めそうと思ってしまうほど^^;
最近は、コンピュータによるデジタル化が圧倒的で、今さら「活版」ではありません。
話を聞いても、こりゃ活版は大変だ・・と思います。
なにせ、在庫の量がすさまじい!
たとえば、明朝とゴシックの2種類のフォントを用意するとして、
フォントの大きさは10種類、それぞれのフォントで3000文字が基準の在庫だそうですから、
2×10×3000=60000文字です(><
活字を在庫しておくだけでも、広い面積が必要ですし、
お目当ての文字を迷わず探し出すには、相当な熟練が必要・・
さらに、3000文字でも足らない文字があれば、全部手作り。
これだけ考えても、活版印刷の大変さがわかりますが、
それ以上に大変そうなのが、校正や修正です。
文字を交換するときにも、全体のバランスや空間などの調整が大変です。
さらに、罫線などの処理も職人技としか言いようがありません。
エクセルやワードで、簡単に直せることが、活版印刷では「技」の世界です。
今まで、パソコンだからと安易に打ち込み、
「とりあえず」印刷してから修正していた自分が恥ずかしくなりました。
もちろん、このブログを打てるのも、今の仕事ができるのも、
デジタルの恩恵を受けて、今の仕事が成り立っているわけですから、
今さら活版に戻るべきだとは思えませんし、戻れもしません。
でも、こんなすばらしい技術があったということは伝えて欲しいし、
日本の「ものづくり」技術として、できれば伝承してもらいたいものです。
考えてみれば、アルファベットなら、26文字。記号を入れてもおそらく100文字以下。
それが、日本語なら3000文字、
さらに、文字として認定されているのは約23000文字だというのだから、
グーテンベルク氏も驚きでしょう。
実は、フラフラと本を買うつもりで入ってみたブックフェアでしたが、
こんないいものを見せてもらえたので、とても幸せな気分になれました。
別に宣伝じゃありませんが、やっぱり展示会は行ってみるものです^^
実は、この大日本印刷のブース、
「携帯で小説が読めます~!」って宣伝している中にありました。
今回のブックフェアでも、デジタルパブリッシングが大きなテーマ。
たしかに「携帯で小説~」もいいですが、私は活版印刷に軍配です^^
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